専門家が答えるQ&A

BT治療とはどのようなものなのですか?

BT治療は、局所麻酔あるいは全身麻酔で内視鏡を気管支に入れ、65℃の温度で肺の内側を温める治療です。これにより、喘息(ぜんそく)症状を引き起こす原因となる気管支平滑筋(気管支を取り巻く筋肉)の働きを弱めることができる治療です。施術時間は約1時間程度で、比較的簡単な治療方法です。内視鏡による治療ですので、メスで体を切ったりするようなことはもちろんありません。

昔からある治療法なのでしょうか?

BT治療は、2015年4月に保険適応となった治療です。日本では導入されて間もない治療ですが、世界ではすでに4000人以上の患者さんに実施されている治療です。日本でもこれからもっと広がっていく治療だと思います。

BT治療は痛みを伴いますか?

実施する病院によって麻酔の方法が異なりますが、当院では全身麻酔で実施していますので術中に痛みを感じることはありません。

どのような喘息患者さんが受けられる治療なのですか?

複数の薬剤を使用しても、頻繁に喘息発作が出てしまうような患者さんが対象です。喘息の病状や使用している薬剤によっては対象とならない場合もありますので、一度主治医の先生や専門医にご相談ください。

入院は必要でしょうか?

アメリカなどでは日帰り手術がメインで行われていますが、日本では安全に治療することを目的に、2泊3日の入院治療が基本とされています。術後の症状によっては入院を延長する場合もあります。

BT治療直後から症状が改善するのでしょうか?

早い患者さんですと、術後すぐに効果を感じ始めます。患者さんによって、症状改善の期間は異なりますが、平均で3か月後くらいまでには効果を実感する患者さんが多いようです。

BT治療後、症状はどのように変化するのですか?

BT治療は、喘息症状や発作を引き起こす気管支の筋肉の働きを弱める治療です。そのため、喘息症状や発作の回数の減少が期待できます。喘息症状を緩和することで、朝までぐっすり眠れるようになったという患者さんもいらっしゃいますし、発作により会社や学校を休む回数が減ることが海外の研究で実証されています。

BT治療をすると薬を止めることはできますか?

残念ながらBT治療は喘息を完治させる治療ではありません。BT治療後も引き続き吸入薬などの薬剤を使用していく事になります。一方で海外の事例では、薬の量や種類を減らせたという報告もありますので、症状の変化をみながら薬を調節していくことになります。

BTによる副作用や安全性について教えてください

患者さんによっては、治療後に喘息症状の悪化等の合併症が見られます。しかしこれらの症状は内科的な治療で数日~一週間以内に消失するのが一般的です。BTの前には担当の先生から詳しいお話があると思いますので、疑問な点があればお尋ねしてみてください。

治療にあたって注意することはありますか?

BT治療実施の3日前から、BT治療に向けて薬剤の服用を始めていただきます。飲み忘れてしまうとBT治療が受けられない場合がありますのでご注意ください。また治療は約3週間おきに3回行い、その都度入院が必要となります。症状によっては入院が予定以上に延長する場合もあるので、職場や家族の方の了解は事前に得ておくようにしていただきたいです。

医療費はどれくらいかかるのでしょうか?

BT治療を受けた月の医療費は高額となるため、高額療養費制度の対象となります。負担額は年齢や収入によって異なりますが、18~69歳で日本人の平均である年収400万円くらいの方ですと、約17万円くらいです。これは実際に受ける治療や、入院期間などによっても異なりますので、各医療機関や主治医の先生にお問い合わせください。

BT治療について、先生のご感想をお聞かせください

これまでは薬物療法が喘息治療の中心でしたが、新しい選択肢が出てきたということは患者さんにとって非常に朗報だと思います。まだ実施数は多くないのですが、これまでの手ごたえとしては、BT治療で良くなった患者さんの笑顔をたくさん見ることができそうな、そういう期待を持てる治療だと思ってます。


聖マリアンナ医科大学 教授
峯下 昌道 先生